Japanese Society for Study of Bone and Joint Infections
理事長 山本謙吾
このたび日本骨・関節感染症学会理事長を拝命いたしました東京医科大学の山本謙吾でございます。浅学菲才の我が身には大変な重責を担うことになり粛然たる思いがいたしております。
本学会は骨・関節の感染症研究の進歩発展を図り、日常診療に役立てることを目的として1978年(昭和53年)に第1回日本骨・関節感染症研究会として発足し、その後、多くの先輩方のご努力により発展を遂げ、2006年(平成18年)の第29回からは日本骨・関節感染症学会として新たなスタートを切り、今日まで発展してまいりました。現在では会員数も700名余に到る学会となりました。さらに2019年(平成31年) 4月1日には法人化を果たし、「一般社団法人 日本骨・関節感染症学会」となりました。
本学会は、整形外科領域の医師のみならず感染症医療に携わる多方面の臨床医、基礎研究者がその叡智を集約し、骨・関節の感染症を撲滅するために活動してきました。この学会で議論された研究に基づいて実際に臨床の現場で応用されるに至った多くの予防法、診断法、治療法が誕生しております。
特に手術部位感染(SSI)は未だに頻度の高い術後合併症の1つでありますが、2004年に当学会はSSIの全国調査を実施いたしました。その調査は日本整形外科学会の学術プロジェクト研究に採用され、そこから得られた多くの貴重な成果は「骨・関節術後感染予防ガイドライン」に引用されております。前回調査からすでに20年近くが経過していることから、当学会では第2回としてSSI発生の前向き全国調査「人工膝・股関節置換術および脊椎インストゥルメンテーション手術部位感染の全国調査(Japanese Database of SSI following Instrumentation by JSSBJI; J-DOSSII、略してJ-DOS)」をスタートさせました。
近年の医療技術の革新はめざましいものがあり、整形外科の領域においても生体材料学、生体工学、細胞生物学をはじめとした多岐の分野における基礎研究の発展に基づいて飛躍的な変革をとげております。しかしこのような状況にあっても私たち整形外科医が扱う疾患群の中で特に骨・関節感染症に関してはまだまだ多くの解決せねばならない課題が残されていると感じております。難治性である感染症の中にあって、外科手術にともなって生じる術後感染は外科医が自ら難敵を作り出してしまうという結果につながります。患者のQOLの改善を願っておこなう手術によって、かえってそのQOLを低下させてしまい、場合によっては生涯にわたる障害を引き起こしてしまう状況をもたらしてしまうことは外科医にとっては敗北というしかありません。このような事態を回避することは我々外科医の大きなミッションであると考えます。そのような意味で、このJ-DOSは本学会が国民に対して果たすべき極めて大切な事業であると認識し、しっかりと推進してまいりたいと考えております。
これら以外にもホームページ充実をはじめとする広報や学会誌編集などの業務も見直すとともに、歴代理事長が牽引してこられた種々の活動をさらに活性化させられるよう理事、評議員、すべての会員の皆様のお力を頂戴し、ひとつずつ歩を進めてまいりたいと存じますので引き続きましてご指導、ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。